思考の補助線

徒然なるままに、思ったことを書き留めます。

「アナと雪の女王」が大ヒットしたワケを考察してみた。

公開直後から随分と話題になっていましたが、

先週、ようやく観ることができました。

 

現在大ヒット上映中の

アナと雪の女王です。

f:id:Ryrientar:20140313192905j:plain

 

僕の周りでも、絶賛のコメントの嵐。

でも、これはひとつの潮流なのではないかと思うところがあって。

 

なので今回は、

この映画が大ヒットしている理由みたいなものを探っていければと思います。

 

 

先ほど、絶賛のコメントの嵐と記しましたが、

そのほとんどが

 

松たか子の歌唱力がすごい!」

「いやー、英語版の方がいいって!」

May J.のカバーもむちゃくちゃ感動する!」

 

といったように、主題歌に集中しているように思います。

 

そしてその一方で、

「ハナシ自体は、まぁありがちで普通だったけど...」

という読後感が多いとも聞きます。僕自身もそうでした。

 

映画のストーリー自体はどこか既視感があったとしても、

挿入歌があまりにも良すぎて、その結果、

興行収入は公開37日で100億円を突破し、ディズニー史上最速の記録を樹立。

 

 

なぜ「アナと雪の女王」の主題歌が、ここまで心を打つのか。

そのヒントは、実は、日本で最も売れたシングルにあるようにも思います。

 

 

日本で最も売れたシングルとは、何か。

そう、およげ!たいやきくんです。


およげたいやきくん - YouTube

 

何を言って...と思われるかも分かりませんが、

ちょっとだけお付き合いください。

 

1975年に『ひらけ!ポンキッキ』の曲として放送されると瞬く間に人気となり、

現在までに450万枚以上売れた、というメガヒットソングとなったわけですが、

 

この曲が、なぜこんなにも売れたのか。

 

それは、単に「たいやきが意志を持って、逃げて泳いだ」ことが

当時斬新な発想で面白かった、というだけではないはずです。

 

重要なのは「およげ!たいやきくん」の歌詞と、時代背景。

そして、そこで暮らす人々が共通して持っていた「ある心情」だと思います。

 

 

およげ!たいやきくん」が発売されたのは、1975年。

ちょうど、高度経済成長期のまっただ中です。

 

当時の状況と言えば、みながみな労働に邁進し、

邁進する度に技術は進化し、物質的な豊かさを手に入れました。

 

働けば、豊かになる。

そのことに疑いなどないように感じる。

物質的な豊かさを手に入れることこそが、幸せになるということだ。

そんな共通認識が、日本に広く浸透していたかもしれません。

 

でも、誰も言い出せなかったけど...

物質的には豊かになる一方で、日々の単調な作業の繰り返しに、

どこか疑問を抱いていたのかもしれません。

 

逃げ出したい。自分の意志で、ここではないどこかへ行きたい。

 

そんな、口に出すと本当に信じてしまいそうで怖くなる深層心理が、

みなの心の奥底に芽生えていたのかもしれません。

 

だからこそ、

 

まいにち まいにち ぼくらはてっぱん
うえで やかれて いやになっちゃうよ
あるあさ ぼくは みせのおじさんと
けんかして うみに にげこんだのさ

はじめて およいだ うみのそこ
とっても きもちが いいもんだ
おなかの あんこが おもいけど
うみは ひろいぜ こころがはずむ
ももいろ サンゴが てをふって
ぼくの およぎを ながめていたよ

 

この歌を聴いたとき、

 

笑い飛ばしながら、実は笑えない自分に気づいてしまった。

本当は言いたかったホンネのホンネを、

言い当てられてしまった。代弁されてしまった。

 

そんな心情だったのかもしれません。

 

しかし、だからこそ、この歌は多くの人たちの心を打ち抜き、

共感され、大ヒットしたのではないでしょうか。

 

 

 

翻して、今回「アナと雪の女王」で歌われた主題歌はどうか。

 


一緒に歌おう『アナと雪の女王』「Let It Go<歌詞付Ver.>」 松たか子 - YouTube

 


Demi Lovato - Let It Go (from "Frozen") [Official ...

 

降り始めた雪は 足跡消して
真っ白な世界に一人の私
風が心にささやくの
このままじゃだめなんだと

 

戸惑い傷つき
誰にも打ち明けずに
悩んでたそれももう
やめよう

 

ありのままの 姿見せるのよ
ありのままの 自分になるの
何も恐くない
風よ吹け
少しも寒くないわ

 

悩んでたことが嘘みたいね
だってもう自由よ
何でも出来る

 

どこまでやれるか

自分を試したいの
そうよ変わるのよ 私

 

ありのままで 空へ風に乗って
ありのままで 飛び出してみるよ
二度と涙は 流さないわ

 

冷たく大地を包み込み
高く舞い上がる思い出描いて
花咲く氷の結晶のように
輝いていたい
もう決めたの

 

これでいいの
自分を好きになって
これでいいの
自分を信じて

 

光浴びながら
歩き出そう
少しも寒くないわ

 

上記は松たか子さんが歌った日本語版の歌詞ですが、

Demi Lovatoさんが歌った英語版と歌詞内容、曲調ともに、

かなり近いものに仕上がっている印象です。

 

 

最も印象的な歌詞は、曲のタイトルにもなっている

「Let It Go」(ありのままで)ですが、

重要なのはこの言葉に込められた、主人公のストーリーにあるように思います。

 

映画で描かれていたように、女王・エルザは

生まれもって氷の魔法のチカラを持ちながら、

それを隠し続けなければならなかった。

そのことが誤解を生み、偏見を招き、それでもずっと我慢を強いられた。

 

「自分は悪くないのに、なんで本来の自分を隠さなきゃならないの!?」

「本来の自分は、もっと魅力的。

 私の輝ける場所は、ここではない、世界のどこかに絶対ある!」

 

エルザの心の奥底には、決して表には出してはならないそんな想いがあった。

それが徐々に育ち、我慢を重ねるほどにむくむくと膨れ上がってしまって、

とうとうこれ以上、我慢ならないところまできてしまった。破裂してしまった。

 

だからこそ、タイトルの「ありのままでいい」という言葉が、

とても強い気持ちとして吐き出されていきます。

 

 

この曲が多くの共感や感動を集めている状況を

およげ!たいやきくん」になぞらえるならば、

現代を生きる多くの人々が共通して持っている深層心理にも当てはまるはずです。

 

少し大袈裟に、少し勘違いも含めながら考えていきますが、

たとえば日本の場合だと、震災の頃まで遡ってみる。

 

全日本人が経験した、あの震災。

大きな大きなショックを受けました。

 

そしてそこから、

みんなで協力すれば、何か大きなことができると信じた。

かたや自分一人では、小さなことしかできないのだと痛感した。

自分の欲望を我慢して、押し殺して生きた。

かたや本田圭介、きゃりーぱみゅぱみゅ、檀蜜、ゴールデンボンバーといった

周りを気にせず自分らしく振る舞える人たちに、そこはかとない憧れを抱いた。

そんな中で、「倍返しだ!」や「今でしょ!」やオリンピックを通じ、

感情をありのままに爆発させることに心地よさを感じた。

だから、刺激を求めてライブやサッカー観戦に行ってみたり、

脱出ゲームやサバゲーといった変わり種イベントに参加してみたりしたけど

それらをSNSにアップして「いいね!」を稼ぐことに疲れや疑問も感じ始めた。

そして目の前の現実に戻るたび、平坦な毎日の連続に

自分は何者でもないという事実を突きつけられた。

それでも「いいね!」って思われる自分を演じ続けるうちに、

いよいよ自分のアイデンティティまでぐらつき始めた。

なんだけど、AKBやSNSで話題の若い素人有名人がチヤホヤされる姿をみるうち、

自分も本当はもっと注目され、活躍できるチカラがあるはずだと強がってみたり、

周りの「あなたってこういう人」に合わせる生活にも、自分にも、

いい加減うんざりしてみたりし始めた頃。


そんな時代背景の中で、それぞれが、なんとなーく、

「自分は間違ってない」「自分はもっとできる、輝ける」と、

ポジティブに、自分の可能性を信じたい願望が芽生え始めていた、と

仮定してみても、全くの的外れではないのかもしれません。

 

そして、これらのことをきっと、ディズニーは計算できていたのでしょう。

意見が言いづらい、周りに合わせなきゃいけない、といった、

一昔前の「KY」が流行った時代の雰囲気からもう一歩踏み込み、

愚痴ではなくその先の願望の心理を言い当てたのは、さすがというより他ありません。

 

上記のような考察に、多分の勘違いが含まれているのだとしても、

今を生きる日本の人々が信じたかったこと、思いたかったことを、

 

この映画の主人公は見事言い当ててしまったのは事実のように思います。 

 

 

しかし、これらのことは、

SNSや詩の中で語られたって、「よくあるセリフよね」で一蹴されてしまう。

 

ここに、音楽のすごさというか、もっというと

「音楽のずるさ」みたいなものがあるように感じます。

 

つまり、圧倒的な活き活きとした表情、歌唱力によって、

歌詞に「いのち」を吹き込むことができる。

 

届くはずのなかった声が胸の奥底に届き、

響くはずのなかった歌詞が体中に響き渡り、

感動するはずのなかった心が感動で満ちあふれる。

 

音楽には、間違いなく、そういうチカラがあると思います。

 

 

そしてさらに、ここがもうひとつのポイントだと思いますが、

 

歌詞では一言も語られていませんが、「生命讃歌」とでも呼ぶべき、

「生きることは素晴らしい!」と、喜びを頭ではなく魂で感じられる音が、声が、

歌の端々に散りばめられているように思います。

 

 

実は、この点については、昨年大ヒットとなった

レ・ミゼラブル」の主題歌も共通しているように思っていますが、

 


Do You Hear The People Sing? 2012 (Full Version ...

 

この映画が大ヒットしたときに、

「魂が喜ぶような、圧倒的な歌唱力による合唱音楽」には

この時代においてとてつもないパワー、可能性を感じていたのですが、

 

アナと雪の女王」にも、ミュージカル的な物語の構成や、

声優(歌い手)の圧倒的な歌唱力、表現力、音楽性に多くの類似点を見ました。

 

まさに、この時代において、

生きていることの喜び、手触り、開放感を心で感じられることは、

共感や感動を呼び込む大きなポイントかもしれません。

 

そして、「レ・ミゼラブル」が美意識の高い大人向けだった一方、

アナと雪の女王」はより親しみやすい全世代的な作品であったがために

より多くの人に受け入れられ、国民的ヒットとなった印象があります。

 

 

 

今を生きる人々の心の奥底にある「本当は言いたかったこと」を言い当てること。

コンテンツ化という手法によって、言葉に「ストーリー」を持たせること。

音楽という手法によって、歌詞に「いのち」を吹き込むこと

それを、歌い手の圧倒的な「歌唱力・表現力」で実現すること。

合唱などの音楽的演出によって、曲を「魂が喜ぶ生命讃歌」へと昇華させること。

それにより、聴く者を励まし、勇気づけ、圧倒的に「肯定」していくこと。

 

 

このあたりが今の時代で大ヒットをとばすポイントのように思いましたが、

一方で、当然ながらそう上手くはいかないものだと思います。

 

もっといえば、見よう見まねの演出や歌が今後ありふれることで、

全体的な質は低下していき、そのうち慣れて飽きていき、

人々を感動させる作品や音楽は移り変わっていくのだと思います。

 

 

次は、どんなものが大ヒットするのか。

 

注意深く観察したいと思います。