思考の補助線

徒然なるままに、思ったことを書き留めます。

相手自身にではなく「相手の大好きなものにいい影響を与える」という切り口 - Concert Milk

前回の更新から、期間が空いてしまいました。

 

今週から毎週1〜2本程度、いつ実施したかに関係なく、

自分が「むちゃくちゃいい!」と感じたアイデアについて考察していきます。

 

※誰も興味ないと思いつつ、その意図や狙いについては文末に一応記載します。

 自分がアイデアプランニングするためのひとり言memoのつもりです。

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第1回は、2011年にカンヌ銀賞も受賞した

Concert Milkです。

 


Konzerthaus Dortmund Concert Milk. - YouTube

 

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人々から全く関心のもたれていなかった、ドイツのオーケストラ。

彼らが着目したのは、ドイツの人なら誰しもが毎朝飲んでいる「牛乳」でした。

 

牛乳と言えば、それはもちろん牛から搾り取るもの。

そこで、自らが生演奏するクラシック音楽を牛に聴かせて育て、

さらに牛乳のパッケージを音符に仕立てて販売までしてしまいました。

 

人々は日常的に売店に足を運んで牛乳売り場へと向かうので、

そこで他の製品とは全く異なる牛乳パッケージを目にすることになる。

ふむふむ、とパッケージを読み込んでもらうことで、

 

あたかも「クラシック音楽を聴いて育った牛の牛乳は美味しいハズ」と思わせ、

「そんな素敵なことをしでかしたオーケストラって?」と思ってもらい、

結果的にオーケストラの認知関心を飛躍的に高めた、というアイデアです。

 

 

これを、単に面白いで済ますのではなく、

面白いと感じるポイントを因数分解していきます。

 

 

まず素晴らしいと思うのは、「チャンスの見つけ方」です。

 

自分たちの提供しているサービスは、

間違いなくいいはずなのに伝わらない、広まらない。

 

そうした状況はあらゆる企業・個人にも見られると思いますが、

それを「俺っていいでしょ?」と押し付けても、まず受け入れられない。

そういう時代ではないですよね。

自分にとって関係のあるもの、明らかな「トク」になるもの。

そういうものにしか人は見向きもしなくなりつつあります。

 

 

では、相手に「自分にとても関係のあるものだ」「自分がトクするものだ」

と感じてもらうには、どうすればいいか。

 

その打開策はいくつか考えられるのですが、

彼らが描いた攻略法の糸口は、

 

「自分たち自身に関心がないのであれば、

 聴いてほしい人たちにとっての関心のあるものに取り入ってしまおう」

 

ということだと思います。

 

身近な例でいってしまえば、恋愛にもそういう戦略ってありますよね。

 

相手の女の子は、自分のことに全く関心がない。

かといって、正面からアピールしたって気持ち悪がられて終わってしまう。

じゃあ、その子が一番仲の良い友人に気に入られよう、という発想と同じです。

 

恋愛だったら、うまく「その子が一番仲の良い友人」と口裏合わせをして

「そういえば◯年◯組の___、良いやつだよね」とか、

「___って、こういうとこあるんだよね。かっこいい。」とか、

あることないこと吹き込んでもらうかわりにハーゲンダッツおごる、

みたいなことができるのかもしれませんが...

 

 

企業のキャンペーンですと、さすがにそういうわけにもいきません。

「相手の大好きなものに、ものすごくいい影響を与えている存在」となる、

というのがこのアイデアの糸口となっています。

 

 

そして、その糸口から相手と自分との間に何を置いて関係性をつくり、

どのように相手の気持ちの変化を生み出していくか、

という設計が、このアイデアは抜群にうまい。

 

 

彼らが目をつけたのは、相手が毎日欠かさず飲み、

身体に取り入れるものだからこそ関心の高い「牛乳」でした。

 

そしてそれは「生きものが生み出すもの」であり、

彼らが奏でる音楽とは「生きものにいい影響を与えてしまう」ものでもあります。

 

相手の関心のあるものは何で、

それに対して自分たちがどんないい影響を及ぼしうるのか。

その関係性の発見、自分たちの強みへの考察が素晴らしいのだと思います。

 

そこがきちんと結びついているからこそ、

クラシック音楽を聴いて育った牛の牛乳は美味しい気がする」と

右脳的に腹落ちする関係性、自分にとってのトクが生まれています。

 

 

そして大事なのが、実際に初めて出会うのは商品パッケージという点。

これまで述べてきたような事柄は、ふつうに暮らす人々にとっては

どうでもいい事情です。いちいち耳を傾けてくれる人はいません。

 

結局は、出会って1秒で、目を引くか。

知って3秒で、恋に落ちるか。

店頭で売る牛乳で勝負する以上、そういう戦いになります。

 

そういう意味でも、音符を基調とした瓶の洗練されたデザインが

直観的に「美味しそう!」と感じてしまうものに仕上がっており、

きちんと人が動くものとして完結しているのではないでしょうか。

 

 

 

さて、ばらばらとポイントを述べてしまいましたが、

以下あらためて整理します。

 

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●戦略的point

・自らにそもそもの関心が持たれていない場合の戦い方として、

 相手自身にではなく「相手の大好きなものにいい影響を与える」ことで

 ひょっとしてイイ奴?/スゴイ奴?と思ってもらい

 自分にとって関係のあるもの、トクするものと感じてもらう

 

●発想的point

・相手の大好きなものとの関係づくりは、

  自分の強みをしっかり見つめ、右脳的に納得できるかたちで設計する。

 とうとうと左脳的に説明しなければ伝わらないこじつけたものではない。

 

インサイト的point

・「自分が好きなものが『イイ!』て言うんだったら気になるな」

・「いい音楽を聴いて育った生きものって、より良いものになる気がする」

・「どうせ毎日口にするなら、少しでも楽しそうで良質なものがいい」

 

●表現的point

・その場に並べられたものと比較して、目立つビジュアルインパクトを持たせる

・説明せずとも伝えたいことが直観的に伝わってしまうデザインを採用する

・出会った瞬間の1秒、手に取った後の3秒で印象に残る、

 わかりやすくて「いいもの感」が伝わる情報設計を行う

===

 

といった要素をつかまえられると、

他のアイデアを考える際に役立ってくれるのかな、と思います。

 

 

 

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さいごに。

 

そもそもなんで、わざわざ昔の事例を掘り起こして考察?という点。

 

自分が生み出したいものは、よりよい生活、よりよい未来をつくりだす

コミュニケーションや新しい価値観なのだと思いますが、

 

それを生み出すヒントは、いま現在進行形で行われているものだけでなく、

時代を問わず、あらゆるアイデアにそれは存在するのだと思います。

未来のヒントは過去にもある、というか。

 

ちょっと小手先を変えて新しそうに、面白そうにみえるアイデア

何でもかんでも生み出したいわけでもないですし、

そういったものに踊らされず、自分が生み出したいものを生み出したい。

 

そのことが、想像以上に難しいことを日々痛感しています。

 

だからこそ、トレンドや時代にとらわれすぎず(もちろん、追いますが)、

自分が生み出したかったものをきちんと把握する。

そのポイントを自分なりに租借し、いまある課題に応用していくことで、

同じような、でもこれまでになかったものを生み出していく。

 

そういう自分の信念、よりどころ、

Planning Policyみたいなものを持たなければならないと思っています。

 

なので、このブログでひとつでも多く、深く、

自分の好きなアイデアを解剖して、アイデアの補助線にしていく、

といった資産を積み上げていければと思いました。

 

才能がない以上は、とんでもないところに辿り着くために、

日々小さな努力を積み重ねるしかない。

 

 

なかなか続かないからこそ難しいのですが、

がんばって続けていきたいと思います。